2016年2月10日水曜日

髪を梳(と)かす躍動 / ドリームクラブ「るい」シナリオ論


ドリームクラブ1号店のシナリオ論

第3回はるいさん。



  • 余裕の色香
1号店メンバーの中では際立って
大人びた雰囲気のるいさん。
受付さんに「一番のグラマラス、パーフェクトボディ」
「とって~もしっかりしてる、大人の女性」
と言わしめるほど。


そんな彼女の本業は、男子校の教師。

どんな先生?なんて尋ねても
「生徒として真面目に出席することね」
とはぐらかされるばかり。
主人公にとっても先生なのだ。


仲良しなホストガールは
関西出身でお姉さん肌の玲香さん
そして、役作りのために
ドリームクラブに来ているアイドル、理保ちゃん

特に理保ちゃんは、
るい先生の事情について
よく教えてくれる娘で、
今回のシナリオでも登場することになる。

簡単な説明を済ませたところで、
るい先生シナリオの概要に入る。

結論から言うと、
このシナリオは「スリル」「秘密」
そして「豹変」の3要素から構成されている。
ちなみにここで扱う”豹変”というのは、
原義での”本質が改まること”だ。

君子は豹変す - 故事ことわざ辞典


  • 余裕の色香?
上で挙げた3要素が、
るい先生のアイデンティティーに
どう関連しているのか述べてみる。

スリル
彼女が醸し出す色気は、
何かしらからの抑圧を受けての
「発散」ということ。
そしてそれは彼女の価値観にも
影響を及ぼしている。
憧れの対象が何なのか?
何故憧れているのか?

彼女の均衡が崩れ、物語が動きだす
チャンスのことだと思ってもらいたい。

秘密
キレイなお姉さん、
という態度の裏で、
るい先生は色んなものを
抱え込んでいる。
事情がある、という点では
他のホストガールも同様だが。
あえて差別化のために言うならば、
るい先生がどういう秘密を、
どのタイミングで打ち明けてくるか、ということ。
これが物語の起爆剤として働くので注目したい。


豹変
1・2・3の三拍子目。
るいがスリルに酔って、
そして秘密を打ち明ける度に、
彼女と彼女のシナリオが転じていく。

ハッピーエンドという前提で進めていくから、
表現として豹変を選んだ。
まあ、仲良くなったと端的にわかる瞬間を指している。


これらの3項目を踏まえつつ、
彼女の物語について読み解きたい。
大まかな流れを図に示してみた。
各要素がどの箇所で機能しているのか、
一通り済んでから下図に手を加えてみよう。



では、序盤に入ろう。


序盤  

  • 秘すれば花
指名して間もない時期だと、
私の秘密を教えちゃおうかな、
とフェイントをかけるばかりで
実質的なことはほとんど教えてくれない。


特に昼間のこと、
教師生活に関しては。


  • キーアイテム「香水」
るい先生の物語で重要になってくるのは「香水」だ。
香水が欲しいという話自体は
とても早い段階で起きる。


説明文には「選ばれし女性だけ」
とあるのがポイントだ。
それを選ぶ男も、渡される女も、
ある意味ハードルをくぐることになる。
なかなかに勇気の要ることだ。


  • レディの密会
めげずに補修を受け続けてみると、
週末の趣味事について話してくれる。


週末には必ず競馬場へ行く。
大好きな馬を見に行くために。


しかし言葉尻を付け足して、
お茶を濁されてしまう。

結局、本当に競馬場に行っているんだろうか?
もしかしたら、冗談かもね、
と思わせるような態度。
先生との距離は遠い。


  • 待ち続ける姫様
またあくる日にはストーカーに悩んでいる、
とため息を漏らす先生。


主人公がストーカー退治に名乗り出ても、
頼りないかも、と気が進まない様子。

その裏には、「白馬の王子様」
という理想の男性像があるから?
珍しく乙女チックなことを話すからこそ、
なおさら気にかかる。

何度かるい先生を指名していると、
受付さんからのメルマガが。
面白いことに、上の発現とは
対照的な内容となっている

しっかりとした振る舞いをみせる一方で、
実はメルヘンな理想を捨てずにいる、
というのが明白になる。

そして、「夜の補修」を受けている
主人公に対しても、
そういう王子様としてあってほしい、
と言葉を残す。

るい先生にとっては、
案外とリアルな男性像ということなのだろう。

  • 病院

平日、買い物へ行ったときに、
ホストガールと出くわすイベントがある。
るい先生の場合は、
ナンパの声をかけられて困っている場面に出くわす。
主人公を見かけた彼女は、
「彼氏のフリして」と耳打ちしてなんとかやり過ごすわけだが。

この後どう?と誘ってみると、
病院の先約が…と浮かない様子。

これも七難隠しの習い性なのだろうか?

  • お子様とデート
白馬の王子様になってみてよ、
とでも解釈したのか、
主人公はデートのお誘いをする。

るい先生もそれをわかった様子で、
白馬に乗ってきてよ、
などと無茶振りをする。

さらに、「保護者代わり」「お子様」と
なかなか痛い連続ジャブをくらわせてくる。


とことん試すのが好きな女性である。

しかも、メールの文面にも
「うちの生徒と行くみたい」とあり、
まだまだ教師目線から
離れてくれない様子。

しかし、いざ恋愛映画を観終わってみると、
それなりに楽しめたようで、
まだまだ物足りない、とどこか
蠱惑的な挑発をしてくる。


かなり思わせぶりな言葉遣い…だが


実際はテニスのお誘い。
かなり紛らわしい物言いだ。


彼女も敢えて狙ってのことで、
まんまと嵌った主人公を
楽しそうに眺める。


どうやらるい先生も主人公とのデートに
スリルを感じていたらしく、腕を回していたのも
それを求めていたから、かもしれない。



恋愛映画の内容と、
それを主人公と一緒に観たということで
(隣の主人公の腕に手を回したまま)
つり橋効果的に主人公を意識したのか、
デート後のメールでは
「生徒の卒業」「(王子様に)
立候補してもいいんだよ?」
という、これまでに比べると
大胆な文面が送られてくる。

るい先生ではなく、
るいさんとして接してもいいよ、
と仄めかしてくる。

豹変の始まりである。

  • 教師の一面
こうして映画館デートを経て、
「るいさん」の態度は変化していく。
それも「昼の顔」をさらけ出す、という形で。
その一つ目が生徒から告白されたという話だ。

これまで隠してきた、
女教師としての一面である。

主人公は好奇な目線で彼女をからかうものの、
るいさんはかなり真剣な口調と態度。
こうした口ぶりからも、
やや生真面目な教師なのだろう、
ということがなんとなく伝わってくる。

また、ある回数を指名していると
アフターイベントが起きるが、
ここでの態度の変化もポイントだろう。



ドリームクラブにいるときは
先生と生徒の関係、
と最初に言い放ったるい自信が、
今はそんな役割はムシムシ、
などと”かぐわす”わけだ。




このアフターにて、主人公と
るいさんの関係性が
夜の教師と生徒でもなく
ホストガールとお客さんでもなく、
一人の女と一人の男としての側面が
色濃く浮き立つようになる。

そして先生としての側面も
先生ではないときの側面も
少しずつ明るみになりつつ、
物語は中盤に突入していく。

るい先生は、
夜の生徒だった主人公、ではなくて
昼間の本業の方の生徒に対して
どう答えるのか。

序盤終わり


中盤

るい先生のストーリー構成を
序盤・中盤・終盤の3つに分けて、
その比重が大きなセクションを選ぶとすれば、
この中盤がそうだろう。

るい先生の秘匿が次々と明かされ、
教師と生徒の関係から踏み込んだ形に変わっていく、
そう表現するとスキャンダラスではあるが、
いくつものスリルがオーバーラップしていく
パートと言える。

  • 昼の顔
告白の件は、主人公が思っている以上に
思いつめているようで、
自分の返答がどうであっても
生徒に傷つけてしまうかもしれない、
とても慎重になっている。




教師として立派だ、
と主人公は褒めるが
「退屈な女」だと彼女は
自分のことを卑下する。

今までような、自信に満ちた様子とは対照的に、
自分のことを話す彼女の口は
なんとも重く苦しい。

  • ささやかなカミングアウト
前回の口調が気になったのか、
主人公は「秘密があるのって辛いよね」
と切り出す。

免許持ってないんです!と
主人公が先手を打って告白してみるも、
なんだか他人事みたいな口調

何もない、と言ってだんまりを決めこむ。

昼間のことを話してよ、と頼むと
ようやく口を開くあたり、
隠し事が複数ある、
その中には話すと後悔しそうなこと、
あるいは迷惑をかけてしまうという恐れがあると
見てもいいかもしれない。


昼間はどんな教師?という質問だが、
その答えは、
先ほどの「運転免許を持ってない」
という主人公の告白とあまり変わりない、
ささやかな告白だ。

地味に生きて死にたくない、というのは
真面目な教師としての一面を
時折見せることからも
なるほどそうなのか、
と納得できる部分はあるし、
るいさんにとっては、
そうした折り目正しい性格が
引け目になっていた、
というのがなんとも人情である。



嫌いになった?と尋ねる彼女に対して、
むしろ、と答える主人公。
なのだが、るいさんはやや懐疑的な様子。


ホントに私が好きなの?かもしれないし、
こんな私が愛されていいの?かもしれないが、
どちらとも解釈できるといえばできる。

まだまだ彼女の本心は見えない。

  • 薄命宣言
この「生徒からの告白」のエピソードだが、
ここで面白いのは序盤まで躍起になっていた
主人公が話半分なリラックスした様子で、
余裕のあった「るい先生」は、
悩み詰める「るいさん」になっている。
態度が逆転しているのだ。
そして、いつの間にか
「夜の先生、生徒」という関係が
曖昧になり、男女としての関係性が
浮き彫りになっている。

その結果として、
るいさんは告白してきた生徒に対して
断りという返事を送る。

昼間の教師⇔生徒という関係と
夜の教師⇔生徒の関係、
言い換えると「禁じられた恋」と
「自ら禁じていた恋」という、
オーバーラップしていた二項に対して、
るいさんが決断して、選択することができた、
とも言える。

あくまでるいさんの目線は
告白してきた子が傷つくかも、
という対外的な、
いたって教師な態度に終始している。

のだが、それを主人公に向かって話す彼女には、
どこか懺悔するかのような後ろめたさを残す。


後で辛いって、どうして?と聞くと、
「お姫様は、もうすぐ死ぬから」と答える。

その奇抜な答えが本気なのか冗談なのか
結局わからずじまい。


その後のメールでも、気にしないでと
はぐらかされてしまう。


  • 彼女からのサプライズ
不穏な台詞を残してあの席から
日を改めて指名すると理保ちゃんが
代わりにお相手してくれる。

ヘルプというやつだ

「るいさんがお店をやめる」
理保ちゃんから衝撃的なことを聞いてしまう。

辞める理由は、仲の良い理保ちゃんにも
教えてくれないらしく、
よっぽど重い事情なのかと連想させる。

そんなやりとりがありつつ、
るいさんが来てくれて交代。

早速聞いてみると、
お店の子達には秘密にしてよ?
と念押しされたうえで教えてくれる。





ドリームクラブを辞める理由は、入院とのこと。
心配する主人公に対して、
大丈夫、とるいさんは言い張ってみせる。


自分が入院するという事態になっても
るいさんが気にするのは
他のホストガールの娘たち。
みんなを心配させたくない、
というベクトルに向かいがちで、
自分自身のことは後回しにしがちな性格が
ここでも顕著に現れてくる。


  • 兆し
彼女のことが気になって
何度もドリームクラブに通っているうちに、
るいさんから2度目のお誘いがくる。

なんだか普段とは違って、
かなり大胆なことをつぶやく彼女。


慌てる主人公をあしらうけれども、
酔いの回りが早いことに変わりなさそうで。





いつもの余裕がどこに行ったのか、
すっかり酩酊気味になってしまう。


大人に振る舞う彼女が
不意に見せる本音の瞬間なのだろうか。
いつの間にか、お客さんである主人公に、
自分が相談に乗ってもらっていることを
申し訳なさそうに話す、るいさん。


秘密を共有しあうような、
どこか怪しげな関係になっていることを
互いに確認して、
2回目のアフター席はお開きとなる。



  • 息抜きと本音
最近楽しいことあった?と聞くと、
あんまりない、と落ち込み気味な答えが。

主人公が遊びに誘うと、映画館デートの時とは違って、
かなり真剣に悩んだ様子を見せてくる。

主人公がさらに一押しすると、
思いきりの良い口調で承諾してくれる。
何かを決心したのだろうか?


今度のデート先は中華街
意外と健啖家な一面を知ることができる。



るいさんは珍しくテンションが高く、
ボウリングに行かない?と
今度は彼女からお誘いを受ける。



ボウリングのスコアを競って
王様ゲームに突入する。


結果はるいさんの勝ち
驚愕的なスコアを見せつけられ、
るいさんからの命令を甘んじて受けることに




彼女からの命令は、
これからも指名し続けること

珍しく、好意をストレートに示してくれる。
まるで無邪気なお姫様である。


別れ際にも「楽しかったわ」と
すっかり素直に感想を言ってくれる。

入院したくなくなった、と
分からない冗談をメールでは送られてくるが。
彼女の病状はどうなのか気になりつつ、
中盤の折り返し地点を迎える。


中盤②

ここから舞台はVIPルームになる。
店側からの干渉は一切なし、
二人だけの空間という
実に刺激的なテーブルだ。


  • 支えとなっていた香水
るいさんの場合、キーアイテムは
癒しと信頼の役割をもって、
それも突発的にではなく
遅効性をもって彼女を助けることになる。

香という文字そのものズバリな役割である。

と言っても、プレゼントのお礼を告げるついでに
浮気の牽制を喰らわせてくれる辺りが
るいさんらしいが。


付け加えて言うなら、裸の私を包む香水
「裸」というのがミソだ。

「秘密」という重い鎧を脱ぎ捨てることのできる
貴重な時間、そのまどろみの中につなぎとめてくれる
プレゼントと言えなくもない。

  • ずっと隠していたコト

唐突に人生を語り出するいさん。
めずらしく自棄になっている。


どうやら別の悩み事があるらしく、
主人公にどんなふうに解決しているか尋ねる。
何か悩んでいるの?
心配する主人公に対して、
とっておきの秘密が紐解かれる。

なんと生まれつきの心不全らしく、
入院するのはそのため。
そして馬に憧れるのも、
自分が走ることができないから。



今までの中で最も彼女の
パーソナリティに触れることが語られ、
それと同時にるいさんは入院に対する
不安の声を漏らす。

深刻な事実を隠してきたるいさん。
それを励ます主人公だが、
彼もまた不安に駆られる。
自分の気持ちが伝わらないまま、
もう会えなくなるのではないか。

生徒との恋は駄目だけど
お客さんとの恋はどうなの?
ハッキリさせるのが怖いのか、
この質問は遠回しだ。

どうなのかな、と
るいさんも答えをはぐらかす。

もし、その人が理想の人だったら?
かつて言っていた、白馬の王子様なら?
主人公は敢えて切り込む。

それならOKという返事に、
自分では駄目なのか、
と主人公は肩を落とす。

のだが、るいさんはフォローの一言を付け足す。

Q.俺には魅力あるの?、
に対しては
A.何度も指名して、お金を使ってくれるところかな
なかなかにキツイ冗談を言ってくれる。
裏を返せば、
こんなに根気強くかまってくれる
珍しい人とも言えるだろう。
るいさんも、そんな人を
VIPルームに連れてきているのだから…


まだ魅力はあるんだけど…
楽しそうに話するいさん。
でもその答えは、結局教えてくれず、
わかったら添削してあげると
彼女は「るい先生」のモードに入ってしまう。
ヒット&アウェイを喰らったまま、
主人公は反撃できずに敗北というわけだ。


  • タイムリミット
心臓のことを聞いて以降、
話題の中心は手術のことに移っていく。


手術の猶予期間は1年
成功率は50%と厳しい条件らしい




死のリスクが非常に高いということでもあり、
だからずっと迷い続けているのだと
切実な事情を告げてくれる。

それでも、ここはドリームクラブの席なのだからと
るいさんは主人公を心配させまいと
明るく振る舞おうとする。
その気遣いが、むしろ
ホストガールとお客さん、
という関係性を強調させる。

話していたときは気丈にしてたものの、
メールの文面には不安と辛さが隠しきれずに、
滲み出ている。

そんな彼女を見かねたのか、
白馬の王子様を探しに行こうよ!
そう言って主人公はデートに誘う。




  • ある大博打
主人公の突飛なお誘いには、
どこに王子様がいるのよ?と
しごく現実的な言葉で返するいさん。

提案するのは、競馬場。
以前にるいさんが話していた、
週末には必ず行っていた場所だ。
万場券を当てようよ、と主人公は誘う。

彼女も思うところがあるのか、
静かに承諾してくれる。

万馬券が当たるにしても外れるにしても、
彼女にとっては最後のデート、
もしくは最期の博打、その前座とも言える。


かつて競馬場のことを話したときから
時間も過ぎて、二人の関係が
すっかり変わってしまったことに
感慨にふける彼女。


そのしみじみとした想いも、
憂鬱の中に溶けるばかり。

死ぬかもしれないという不安に悩む
るいさんに応えて、主人公は
一世一代の大勝負をしたと意気込んでみせる。


なんと全財産を、万馬券につぎ込んだのだ。



当たるのも外れるのも確率は2分の1、とは
言うけれども、万馬券の倍率は
100倍以上になるのも珍しくはない。
むしろ主人公の方が
分の悪い賭けに出ている。
そうでなければ、
50%の確率で死ぬかもしれない
るいさんを励ますことはできないと
考えたのかもしれない。

主人公は負けたところで
持ち金がなくなるだけなのだから。


キザな真似をしてみたものの、
万馬券は当たらずに、
全財産は水の泡になるハメに。


そんな彼に対して甘く慰めるのではなしに、
キチンと叱ってくれるのが、るいさん。
ロマンチストな一面がありながらも、
それに陶酔しきることはない、
かつての受付さんからのメールで、
るいさんは成熟した大人、
と紹介されたことが
如実にわかる瞬間だ。

自分のせいでこんなことをしてしまったのかも、
という憤りが、あるいはあったのかもしれない。


でも楽しかったでしょ?
と聞けば、まんざらでもない返答をしてくれる。

叱ったあとにも、
しっかりフォローを入れつつ、
主人公の好意に感謝を述べてくれる。

その好意への返答か、
もう少し付き合って、と
るいさんからのお誘いが。

  • 臆病風の遊園地
彼女が最後に選んだのは、
レストランや高級ブティックでもなく、遊園地。
静かな雰囲気よりも賑やかなところで
元気が欲しいとのこと。

いつも思わせぶりなことを言っているから、
ジェットコースターも楽しめるでしょ?
と主人公は誘うけれども、
どうにも乗り気でない様子。



 怖いの?とからかう主人公

それなら1回ぐらい乗ってみようよ、
主人公が誘うけれども、
すっかり尻込みしている彼女。

ジェットコースターがよっぽど嫌だったのか、
たどたどしい口調で(これもまた珍しく)
心臓止まったらどうすのよ!
切実で悲しい言葉が突き刺さる。



からかうことを面白がっているうちに、
彼女の心臓のことを失念していた、
そのことで謝罪する主人公。


楽しそうにデートはしているが、
結局は主人公は健康体で、
るいさんは半ば余命宣告を受けた患者。
その溝は簡単に埋まるようなものではない。
この2人が一緒にいるのも、
わずかな瞬間でしかないと
思い知らされる。

ただ、るいさんの容体そのものは
ジェットコースターを許してくれている。

それを許していないのは彼女の気持ちだ。

恋愛のスリルを味わいながら
色々な秘密を見せて来たるいさんだが、
その始まりにはいつも
主人公の促す言葉があったから。
彼女から、勇気をもって告げたことは、まだない。
ジェットコースターも同じだ。
能動的に乗ろうとしなければ、乗ることはできない。
そして乗れずにいるだけの恐怖は、
スリルとして昇華されることもない。

それなら、と主人公が提案したのは、メリーゴーランド。

子供っぽくない?と少し笑顔を戻するいさん。

今は童心に帰っているんだから、
まだそういう時じゃないんだよ、と
今度は主人公の方が遠回しな表現で励ます。

いつぞや、「俺に魅力ってあるの?」と
質問した時の、ある意味での仕返しである。


このまま手術を受けないと一緒に居ても…
という危惧が無視できないことも確認しながら、
いつもに増してロマンチックな日が終わる。

当然、競馬で負けたことにコメントもくれて。


押して引いての飴鞭巧みで、
元気になったら今度は乗ろうよという
主人公からの約束には、
しみじみと頷いてくれる。

今日はあっという間だったかも、と
なんだか寂しさを垣間見せて
お別れの時間。



お互いに名残惜しかったのか、
その次の席では話題に登ってくる。

やはり出てくるのは、万馬券のこと。

もっと賢明なやり方もあったでしょうに、と
つぶやく彼女だが、愚直な姿からかえって
気持ちが伝わったと、
あれから少し間が空いたにも関わらず、
感謝の気持ちは変わらないのだと告げる。

そんな彼女に、成功するよ、と力強く
再度念押しする主人公。

成功するから、俺は見舞いに
必ず行くんだと付け足して。

競馬場にもまた二人で行こうと約束して。


この返答が返ってきた時点で、
この物語における主人公の役目は
終わりと言ってもいい。
あとは、彼女自身が手術を受ける覚悟をするだけ。
ただ見守るまま、物語は終盤に突入する。

中盤終わり


終盤

  • 決めなきゃ決まらない
また一緒に行こうと約束したものの、
手術の不安が消えることはなく、
どこか上の空なるいさん。


戻ってきたら指名するから。
主人公のアタックに対しても、
もはや冗談で躱すこともなし、
戻ってこれないから…と
ため息ばかり。


デート直後には決心していたように見えたが、
それでもまだ手術の不安を拭いきれずにいる。
彼女の持つ几帳面さが、こういう土壇場では
生真面目さとなって自縄自縛しているのが
人間臭さを醸し出ている。

そんな焦燥もあってか、
自分がいなくなったら、
ドリームクラブのどの娘を選ぶの?
と悲しげな問いを投げかけてくる。

君以外にはあり得ないんだから、
他の娘は誰だってかまわないと
アツく返す主人公。
しかし、るいさんは涼しく振る舞おうとする。


つまらなくなったら、
君の病室に行くよ、と主人公。

それに対して、るいさんは
手術はアメリカなんだよ?
もう気軽に会えなくなるんだよ?と
さらに突き放した答えを返す。
まるで本当の気持ちを探るかのように。

それでも飛んでいく!
白馬にまたがって。
そう答える主人公



その答えには、
どこか満足そうな様子のるいさん。

  • 待ち人来たれ
魔女コスチューム・デイのメールでは、
アメリカに一緒に来てくれるの…?という
期待感を漂わせるような旨の文面が。



決心はもうできている。
そのうえで、最後の最後で背中を押してくれる人
そういう人を待っていた。
その人なら、もし手術で死んでしまうとしても、
きっと逃げずに見届けてくれるはずだから。

おそらくるい先生の心情としては
そういうことなのだろう。
つまり、最期を看取ってくれる人として、
主人公に白羽の矢を立てたのだ。


そしていよいよ、最後の指名を迎える。

無粋というか、メタな物言いになってしまうが、
ゲームシステム上、彼女は12月末の
指名可能な最終日まで
ドリームクラブに在籍している。

逆に言うと、最後の日まで主人公を
待ち続けているということでもある。
1年以内に、という手術のタイムリミットの
ギリギリまで、彼女は希望を捨てないわけだ。


これまでずっと付き添ってくれた主人公を、
呼び止める、るいさん。

三度目のアフターである。


  • お姫様の大博打
夜景の見える場所に連れ去られる。
すわ話を切り出すや、
「お別れの挨拶」と
悲しげな物言い。

これまでも心配かけてきたから、
ということなのか、
この先あなたを悲しませたくない、
彼女は言う。

彼女の中の、どこまでも根底にあるのは
慈愛にも似た、後ろめたさなのか。

そういうふうに思いやりをもっても、
離れ離れになろうと提案されることは
悲しいと主人公は言う。

もう、遠慮する必要なんてない、
と後押しを受けた彼女は、
この瞬間にスリルを掴む。





白馬の王子様を見つけることができたから、
もう満ち足りているの
彼女は自分の気持ちを思い切りぶつける。

私はもう死ぬだろうけど、
あなたはそんな私にどうして欲しいの?
素直な告白の中に、
少しニヒルなチャームを織り交ぜる彼女。

主人公も同じくスリルに乗る。
手術を受けて欲しい、
死んでほしくない。
好きな人だから、と告白する。






お互いの今の気持ちがわかった
この瞬間に、彼女の顔に笑み色が戻る。


それは、この物語における、最後の秘密

玲香さんと理保ちゃんが、
日本で手術を引き受けてくれる
医者を見つけてくれたのだ。

自分のためでなく他人のために、
るいさんのそんな振る舞いが、
巡り巡って彼女自身のもとに
還ってきたとも言える。

主人公が競馬場で大博打に出たように、
彼女もまた自分の想いを賭けた。

主人公は一敗、
そして彼女は一勝。
二人合わせて一勝一敗。
それなら二人三脚にも丁度いいだろう。

だから手術を乗り越えた彼女は、
胸を張って教師に戻ることができる。


 一方、主人公はまだまだ負け続け、
というのがなかなかビターだが。

それでも、彼女にとっては王子様。
今度は彼女が万馬券に賭ける
順番ということだろう。

だから、主人公にも豹変する瞬間が来るといいのだが。
その瞬間もまた、とっておきのスリルだろうから。

終盤終わり



序盤から終盤まで一通り確認したところで、
先ほど見せた図に
スリル・秘密・豹変をチェックしてみよう。

すると、以下のようになる。




通してみると、要所要所の直前・直後には
豹変のポイントがあり、
その前振りとしてスリルと秘密が現れている。

また、スリルと秘密の割合を見てみると、
序盤は秘密ポイントが多めで
中盤①②は拮抗しており、
終盤ではスリルの方が多くなっている。

序盤はちょっとした秘密を漏らすばかりで
彼女から攻めるようなことがなかった。
守り主体のフェーズ。
映画館デートが、いわゆるスプリングボード
として物語のギアを上げていく。

スプリングボード(スプリングボード)とは - コトバンク

エンジンの温まってきた中盤になると、
彼女からも積極的に誘うようになる。
それと並行して、少しずつカミングアウトな話題も
増えて、物語のあちこちに起爆剤が撒かれる。
それが次々と爆発していくフェーズなわけだ
ゆえに攻守入り乱れた、
実に刺激的な期間になっている。

この地雷原の中で主人公とるいさんの関係性は
爆発、いや発展していく。
しかし突然に時間が静止するのが
今回のクライマックス。

終盤では物語を大きく動かすような
出来事もなくなり、るいさんの内面に
スポットが集中する。

面白いのは、スプリングボードがほとんど無い
終盤において、るいさんが最も大きな感情の飛躍、
つまり告白の決心をすることだ。
これは秘密をさらけ出す回数の多いのに、
変わることができず落ち込む中盤とは対照的だ。

小刻みなステップと、溜めの深いジャンプといったところか。
楽しく弾んでいるより、歯を食いしばってでも
乗り越えたいものがあった。
実に彼女にふさわしい構成だと、そう解釈したい。



サブシナリオ

解説自体は要点を述べるぐらいに留める。

コンプリート・エディピョンに追加されている
新規シナリオ

新規とは言ってもエンディング後に
展開されるというわけでなく、
あくまで本編中の寄り道としての立ち位置になる。

強いて言うなら
アクションRPG「souls」シリーズのDLCマップにあたるだろう。


まあ、困難を乗り越えた二人のその後を
示唆しているかもしれない、
ぐらいに見ればよいだろうと
一般論として置いておく。


実際、「神秘の鏡」という
理想の相手を映すとされる鏡の観光では、
まだ彼女は自信なさげな様子を見せている。






メインシナリオのエンディング以降として
機能しているのは、その後。
映画館デート後に起きるエピソードからだ。

るいさんが、担任の生徒、
バンド部所属の生徒のことで
主人公に相談に乗ってもらうという構図だ。




最初は主人公は不真面目に対応するも、
段々と彼女の熱意に負けて
真剣に聞くようになっていく。


理保ちゃんヘルプ後、入院話を経て
もう一度。


編曲のことで他の部員と
トラブルが起きているらしく、
るいさんは心配している。




主人公は「見守ってあげてほしいな」と言う。

教師としての一面を、
いよいよサポートするようになる主人公
というのが、メインシナリオの後日談的だと
感じる理由の一つだ。



今度はVIPルームに移ってから



主人公のアドバイス通りにしてみると、
バンド部は再び一致団結したとのこと。



なのだが、当のコンテストに付き添いで
応援に行くことを断られることに。



こっそり行っちゃえば、と提案する主人公。
それならあなたも一緒に来てよ、という
話になり、同伴の同伴デート。




コンテストは、予選と本選に分かれ、
相談にあった生徒のオリジナル曲が
披露できるのは本選に勝ち上がってから。





付き添いで応援に行きたかった
るいさんの気持ちにも頷ける。

残念ながら、生徒は予選敗退。
オリジナル曲は披露できずじまい。




練習を見守ってきたこともあってか、
当人たちのように悲しむるいさん。





俺は褒めてあげるかな、と
諭してみる主人公。




投げやりに言っているのではなく、
案外と筋の通った主張に
聞き入る新米教師。


そして励ましの言葉も忘れない王子様。




そんなこんなで
バンド部のエピソードはおしまい。



「俺には魅力ある?」の添削課題が出された後にて

三者面談の時のスーツに迷っているらしいが、
主人公は女物のスーツに詳しいわけでもなく、
話がまとまらない。














最終的に、ショッピングに来てもらう、
ということになる。
相談自体をふいにするわけではないのが
なんとなくいじらしい。






当日、試着に付き合ってみるも
決めきれない、るいさん。




スカートタイプからパンツタイプか
選ぶのにも苦労している様子。





嗜好性を持っての選択には強いけれども
そこに義務感が混じると
途端に消極的になるのは
るいさんの傾向だろうか。





だから、スーツを主人公に
選んでほしいというのもあるのだろう。
自信をつけるきっかけとして。


なんとかスーツは選ぶことができたらしく、
これで一件落着。







それはそれとして、
今度はアクセサリーを選びに行くことに。
王子様も楽ではないか。


一通り買い物が終わって、
夕暮れの公園で息抜きに。








ドリームクラブでは大人な女性とは言われてはいるが
教師としてまだまだ新米、
三者面談のプレッシャーに悩んでいるご様子。










上手く話せるかな…と不安そうなるいさんに、
滑舌良くしたら?と提案する主人公。







気を紛らわせたい、という狙いで
「老若男女」「バナナの謎はまだ謎なのだぞ」
「新進シャンソン歌手、
総出演、新春シャンソンショー!」
次々とお題を出していく。











それに生真面目にも付き合うのがるいさん、
役に立つの?とようやく一息つく。




早口言葉を言っている間は
三者面談のこと忘れられるでしょ?
という主人公のことばに、
クスリと笑うるいさん。

ただ、主人公なりに悩みを真剣に聞いてくれた
ことに変わりはなく、ありがとうと
お礼を述べる。


サブシナリオ冒頭のほうにあるが、
真面目に向き合ってくれるかどうかが
彼女にとって重要なのだろう。
TPOをわきまえて欲しいのだと。
その矜持が、メインシナリオでは
自分自身を苦しめていたわけでもあるが。


最後のデートイベントは、ビリヤード。

教師相談の一環として、というよりも
単にストレス発散のために遊びに行く
と表現するほうが正確だ。













教師の彼女のために、という
主人公の義務も不必要となり、
純粋に一人の男性と
一人の女性として、
デートするだけ。



メインシナリオの中盤以降も
「男女」の関係性を強調する構成ではあるが、
代わりに「心臓の手術」
という大きなテーマがあった。


このビリヤードデートは、
そういう物語性も存在しない所に面白さがある。





「女教師」としてでもなく
「心臓を患う悲劇のヒロイン」でもない
るいさんの、どこに魅力を見ているのか?
そういう陶酔の余地がなくても、
ちゃんと彼女を見つめることができるのか?






短期的な恋ではない、
時間をかけなければ成立しない関係性
それを根気つよく続けられるか?


それは、もう実際に「プレイ」してみないとわからない。

どういうところが受け入れることができて、
どういうところが受け入れることができないか。




そういう魅力もあったのか、と思えば、
こんな嫌な人だったっけ…
と思うこともあるかもしれない。



まあ、王子様はそんなに真面目でもないかもしれないが。













何にしても、るいさんと主人公の関係は続いていく。
このまま付き合い続けていようと
急に愛想つかされようと、
言ってしまえば大差ないことだ。

ビリヤードよろしく、
どちらも1ゲームに過ぎない。



彼か彼女か、どちらのショットが続く限り、
このゲームと、この夢は終わらない。



それでいいじゃないか、愛しているなら。

というわけで最後に「本牧ブルース」を紹介して、
今回はお終い。